「・・・児戯だな」


歩実は少し自嘲気味に笑った。


己が身をおいている戦いの場に求められるのは殺すか殺されるかだけだと思っていたからだ。


それがどうした、ただの一度や二度相手に有効なダメージを与えた後戦いが終わるまで逃げ惑う、それが自分たちの求める戦いなのか?


「いいか。戦いとは己の全生命力を賭けて互いの命を奪い合う行為だ。腕を捥がれようと脚を折られようと"自分が生き延びて相手を死に至らしめれば勝ち"なのだ」


遠い昔そう教えてくれた人がいた。しかしその人はもういない。


言葉だけではない、あの日あの人は私に本当の戦いを教えてくれた。


その時の事を思い出す。今度は口元に少々亀裂を浮かべ、笑った。


歩実は本当の戦いを知っている。だから心の底から笑う事はできなかった。


いくつもの光源が重なりまぶしさの極みとも言える勝利の高台へ上る。


その下に集まる、己に敗れた戦士たち。笑顔で右手を差し出してくる。


「・・・くだらんな」


誰も理解できないであろう言語で、誰にも聞こえないであろう小さな声で、そう呟きながら歩実は右手を差し出した。


~ライトノベル風 谷本歩実列伝~